「植物と歩く」とはどういうことでしょう?植物は一つの場所に留まっていながらも、根は地中に、茎や葉は地上に伸びて這(は)い広がり、花をひらかせてはしぼむ、その一生は動きに満ちています。本展では、「植物と歩く」という言葉に、植物の営む時間と空間に感覚をひらき、ともに過ごすという意味を込めました。作家は植物を観察しその特徴をとらえようとするなかで、普段わたしたちが気づかずに通りすぎてしまうようなその意外な姿に迫り、自身の思いを重ねてイメージを作りあげるのかもしれません。
本展では当館のコレクションを中心に展示し、植物がどのように作家を触発してきたかを探ります。コレクションからは、画面をおおい尽くさんばかりに増殖する植物の生命力を描いた佐田勝(さたかつ)の油彩画とガラス絵、花が散る瞬間を写実的かつ幻想的に固定する須田悦弘(すだよしひろ)の木彫、水芭蕉を生涯のモチーフとした佐藤多持(さとうたもつ)の屏風や、約3mの大画面に樹木を描いた竹原嘲風(たけはらちょうふう)の日本画などを展示します。コレクションに加えて、植物学者・牧野富太郎(まきのとみたろう)による植物図と植物標本や、倉科光子(くらしなみつこ)による種と芽吹きの両方の時間を記録する絵画を紹介します。
皆さんも、実在の植物から想像上の植物まで、美術館に集まった魅力あふれる植物たちとともに歩いてみませんか。