「作品解説を読み込んで理解を深める」、「自分の知識をもとに目の前の作品を楽しむ」ことは、新しい発見があり、学びもあり、まさに美術鑑賞の醍醐味ではないでしょうか。でも、美術鑑賞ってなんだか難しそう。そんなイメージを持たれている方も多いですよね。鑑賞方法は十人十色、例えば作品に表現された喜怒哀楽の顔つきやふとしたしぐさ、脇役のようなモチーフに注目したり、「可愛い」や「怖そう」など率直な感想を語り合ったり、皆それぞれに楽しみ方があっても良いのです。
今回は、展示担当の学芸員が考える3つのキーワード「感情」、「しぐさ」、そして主題を紐解くカギとなる「モチーフ」をもとに、美術品がもつ様々な「表情」をご覧いただきます。
亡者の罪業を裁く地獄の王・閻魔は、目と眉をつりあげた憤怒の形相で描かれ、世間では「嘘をつくと閻魔様に舌を抜かれる」といった逸話が伝えられるなど怖いイメージが定着しています。しかし、そうした伝承とは異なる一風変わった閻魔の姿が河鍋暁斎(1831~89)の作「閻魔・奪衣婆図」に描かれています。
また、目に見えている表現だけではなく、信仰や歴史、故事や伝説といったお話しにも作品主題を理解するヒントが隠されています。獅子の口が開閉しているのはどうして? 仙人の肩にのる蛙の特徴は? など「表情」豊かな美術品が皆さんを出迎えてくれますよ。普段の美術鑑賞から少しだけ肩の力を抜いて、美術品と対面したときの素直な感想を大切に、自分だけの“観賞スタイル”でお楽しみください。