対岸の火事という言葉があるように、どこかの災厄は、河川や海あるいは峰によって断絶させられます。どれほど人が国や所有という概念で結びつけようとも、その地形によって人の意識と生活は隔てられ、形成されていきます。一方で、私達はメディアでつながることで互いの状況に一喜一憂し、個々の生活を思うことも可能です。このような断絶を超えていくものは、想像力のみだと言えるかもしれません。
イタリア人キュレーター、レアンドロ・ピサノが発表した「田舎未来主義宣言」では、経済・文化・政治の都会中心な構造、そして田舎が周縁的な場所として認識される価値観が見直されるべき、という考えが示されます。エナジー・イン・ルーラル(EIR)もまたこの考えの下、キュレーターとアーティストと共に、青森あるいは南イタリアの地を探索してきました。表現者たちが物事を見出す方法を共有することで、いかに土地のエナジーを発見しうるか、その方法を獲得していくには何ができるのか、思考を進めていきます。
人が暮らす場所において共通するものは、自然環境が、人を隔て、あるいは結びつけること、生活の糧であり、心の拠り所でもあるということでしょう。そのため、ある地域について考えるとき、それは固有のものからの発想であると同時に普遍的な問いへと接続していきます。遠く離れた地のことでさえ他山の石として捉え、私たちが視点を更新していくならば、ある場所に立ち向かう度に、新しい価値を見出しうる機会となるはずです。