日本におけるグラフィックデザインの草創期に第一線で活躍した図案家・杉浦非水(1876-1965)。
三越の看板デザイナーとしての仕事を皮切りに、ポスター、雑誌表紙、装丁など、時代やクライアントのニーズを敏感に察知しつつ多彩な展開を見せた非水のデザインは、印刷という新興メディアをとおして当時の社会に浸透し、現在もなお高い評価を得ています。
非水の妻は、川越の有力な商家岩﨑家出身の歌人・杉浦翠子(1885-1960)です。実は、第二次世界大戦の戦況が一層深刻化した1944年(昭和19)、非水は岩﨑家に自身の仕事である膨大なグラフィック作品群を疎開させていました。
そしてその一部は今日まで岩﨑家の人々によって人知れず守り伝えられてきました。
本展では、新発見の『非水百花譜』原画をはじめ、ポスターや雑誌表紙といった非水図案の印刷物、図案集、若干の書簡類や写真類など、1000点以上に及ぶ非水の戦争疎開資料のなかから、
厳選した約300点を初公開します。モダンでスタイリッシュな非水図案の世界をどうぞお楽しみください。