19世紀後半、目に見えるものを、ありのままに表現しようとする写実主義や、直接的な視覚の印象を捉えようとした印象派への反動として、人間の精神や想像力に根ざした世界を表現しようとする画家たちが登場してきます。彼らはやがて象徴主義の画家たちと呼ばれますが、その代表的な画家の一人にオディロン・ルドン(1840-1916)がいます。
ルドンは、その画業の初期から長年にわたり画壇の流行に背を向けて、もっぱら木炭の素描や版画による黒と白の世界に、夢と現実、意識と無意識とがないまぜとなった怪奇・幻想的な作風を展開していきました。
また、1890年頃からは、油彩やパステルなどによる鮮やかな色彩が用いられ、その幻想世界に華やかな輝きが加わっていきます。
本展は、質・量ともにルドンの優れたコレクションで世界的に知られる岐阜県美術館の所蔵品を中核に、他の国内所蔵による作品を加え、美術史上特異な位置を占めるルドンと、その周辺の画家たちの世界を紹介しようとするものです。