今井俊介(いまいしゅんすけ/1978年生まれ)の軽やかで鮮やかな絵は、一度見たら忘れられません。パソコンで加工した下図を用いた構成は、人工的な計算式を想起させます。一方で、アクリル絵具を調色してフリーハンドで彩色された画面には、画家の熟練した手わざと温もりが感じられます。デジタルと手仕事、現実と虚構、風景と抽象、アートとデザインなど、さまざまな概念や領域を自在に行き来する今井の創作のあり方は、私たちが生きる現代社会を反映しているかのようです。ストライプをはためかせドットの穴を通り抜けるさわやかな風は、画面の前の鑑賞者の感覚を開いてくれるでしょう。
第87回公開制作では、今井がふだんスタジオで行っている作業をそのままに、絵を描き進めていきます。夏から秋にかけて季節と共に変化する画家の熱量の移り変わりを、そして絵画の完成までのプロセスを、どうぞその肌で感じ取ってください。