高麗時代(918~1392)につくられた青磁は、韓国陶磁史の一つの黄金時代を築きました。中国の越窯(えつよう)や汝窯(じょよう)などの影響を受けながら発達した高麗青磁は、その釉色の美しさから「翡色(ひしょく)」と讃えられ、あるいは独自の発展を遂げた象嵌(ぞうがん)という装飾技法など、青磁芸術の頂点を極めた中国・宋時代の青磁に勝るとも劣らない独自の陶芸美をつくり上げました。また、貿易品として日本にも将来され、我が国のやきものにも少なからず影響を与えており、日本人にもゆかりの深いものとなっています。しかし、その高麗青磁の誕生をめぐっては、不明な点が多く、これまで大きな謎とされてきました。
本展では、韓国の海剛(ヘガン)陶磁美術館、湖巌(ホアム)美術館、康津(カンジン)青磁資料博物館所蔵の窯跡出土の初期高麗青磁の陶片資料を中心に当館所蔵の高麗青磁の名品や関連する中国陶磁資料などを加えた約百十点を展示します。近年の韓国における研究成果と最新の考古学的発掘成果を日本で初めて紹介し、高麗青磁誕生の謎の一端に迫ります。