アメリカの現代美術の巨匠、ロイ・リキテンスタイン(1923~1997)は、アメリカンコミックや広告など、大衆文化のイメージを作品に引用したポップ・アーチストとして知られています。
リキテンスタインは平面的で鮮やかな色彩、黒い輪郭線、そして印刷面の網点といった印刷物の性質を強調してそれを絵画化するという独特のスタイルで、複製の印刷物によって普及した大衆文化のイメージだけでなく、印象派をはじめ近代美術の様式や主題を単純化あるいは洗練化するという独自の作風を確立しました。また、筆あとそのものをモチーフにしたり、イメージを機会のように抽象化したりするなど、常に美術そのものを挑発するような作品を作り続けました。
リキテンスタインは絵画作品だけではなく、展覧会のポスターや版画作品も数多く手がけており、彼の芸術の重要な部分を占めています。彼の版画作品は、通常では考えられないような素材を用いたり、箔が貼り付けられたりと、様々な加工がなされ、版画という既存のイメージを大きく逸脱しています。リキテンスタインは、ポップ・アートのイメージに至る前の初期の頃から版画の手法に着目し、木版やエッチング、リトグラフなどさまざまな技法を試しており、後に彼の芸術を特徴づけるようになった、「ポップ」的なイメージが最初にでてきたのも版画作品だったのです。
この展覧会は、地元の個人コレクターが秘蔵する約50点の作品を中心に、国内各地の美術館、個人コレクターの協力を得て、約100点の作品によって、リキテンスタインの版画芸術の魅力を紹介するものです。