20世紀後半、日本人女性としてはいちはやく銅版画の可能性を見つけ、パリで制作した南桂子(1911-2004)の展覧会です。
富山県高岡に生まれ、幼少の頃から絵を描いていた桂子は、戦後東京に出て、油彩画を団体展に発表し、さらにパリに渡ると、銅版画家として頭角を現しました。
南桂子のモチーフは約40年間、ほとんど変わりませんでした。
鳥、少女、一本の木。
自分の足でひとり立ち、或いはたたずみ、透明感に満ちた世界にいます。
絵の中には孤独と、それをくぐりぬけた幸福が、穏やかに調和しているかのようです。
銅版画の肌合いは、この静かな世界を表現するのにふさわしく、さびしさ、やさしさ、あこがれ、希望が、淡い色彩として光の粒子のようにちりばめられています。
作品をめぐる、つかの間の一人旅。
南桂子 約45点、浜口陽三 約10点の銅版画をご鑑賞ください。