大正から昭和にかけ日本画壇で活躍した鏑木清方。その画業の始まりは挿絵でした。16歳で挿絵画家となり、25歳の時に実力派の挿絵画家が活躍する雑誌『文藝倶樂部』に初めて口絵を寄せ、人気挿絵画家の仲間入りを果たします。そして、大正のはじめまで様々な雑誌で口絵や挿絵を描きました。
ほぼ時を同じくして、出版界では子どもたちに向けた雑誌が次々と創刊されるなど、児童文学が花開きます。教訓話や世界のお伽噺に日本画家の武内桂舟や梶田半古らが挿絵を描き、清方も表紙絵や口絵、挿絵をはじめ、付録の双六なども描きました。その作品数は大人向けの文芸雑誌に匹敵するほどで、清方の大切な画業と言えます。
本企画展では、清方が描いた子どもに焦点を当て、子どものいる情景を描いた作品とともに子ども向け雑誌の口絵などを展示し、清方の挿絵画家としての新たな一面、子どもへのまなざしをご紹介します。