北海道の彫刻を紹介していく当館の活動の一環として、小樽を拠点に制作を続ける鈴木吾郎(1939~)の展覧会を開催します。
北海道学芸大学札幌分校(現・北海道教育大学札幌校)卒業を出発点とする彼の彫刻家としての歩みは60年を超えます。一貫して具象による人体像を追求してきましたが、特に1980年以降はテラコッタによる女性像を数多く手掛けています。そこには、温もりさえ感じられる焼き土の色と肌合とともに、柔らかに屈曲した姿態や交差する腕や脚、端麗に伸びる指先など、繊細で軽やかな比類なき表現を見ることができます。それは、西洋的な具象表現を取り入れつつ、土器や埴輪にも通じる素朴な技法のなかに凛とした東洋的精神の発露を求め、生まれてきたものなのです。
本展では、初期から現在に至る60年の制作活動を5章に分け、彫刻・素描約50点でたどります。また、道内各地に設置した約60点の公共彫刻もパネルで紹介します。さらに、インタビュー映像上映や関連事業を通じて、小樽潮陵高等学校や札幌西高等学校などでの美術教諭としての側面をはじめ、鈴木吾郎の世界に多角的に迫ります。