日本画家・福井爽人は、1937(昭和12)年旭川市新町に福井貞一・チエの長男として生まれ、2歳のとき一家で小樽市潮見台に移住、多感な青少年期を小樽で過ごした。
美術への関心は早く、潮見台中学校時代に、国画会所属の版画家・河野薫の指導を受ける。画集で知る日本画の世界に憧れを抱くものの、北海道では日本画の歴史は浅く学ぶ機関も指導者も少なかった。
父・貞一は北海道小樽潮陵高等学校の英語教師を務め、爽人は同校に高校2年まで学び、その後父の転勤にともない、札幌北高等学校に転入した。卒業後は上京し、日本大学芸術学部に進学するが、当時28歳で東京藝術大学助手の平山郁夫との出会いから藝大進学を決意、1961年東京藝術大学美術学部日本画専攻に進んだ。さらに同大学院修士課程修了後、藝大助手となり法隆寺金堂壁画再現模写に参加し、1991年日本画科教授となり、現在は名誉教授である。
在学中から院展を中心に作品を発表し、1969年第54回院展奨励賞受賞、その後1981年まで計7回にわたり同展にて奨励賞を受賞。1982、1983年日本美術院賞、1991年内閣総理大臣賞、1993年文部大臣賞を受けている。その作風は初期から繊細な叙情性を湛えたものであったが、1980年代から中国・インドを旅し取材を重ねるなかで、日本美術の源流である遥かな地への想いが凝縮し、代表作が次々と生み出された。日本美術院では1983年同人・2020年顧問を務める。小樽を遠く離れて数十年が過ぎても、故郷に対する思いは色あせることはないと語り、2020年(令和2)年福井爽人は、春の院展、再興美術院展覧出品作5点を小樽市に寄贈することを決意した。
本展は、福井爽人自身が選りすぐった2010年以降の代表作に、国内外の旅で描いたパステル・素描を加え、辿り着いた新境地を展覧するものです。繊細な筆致、詩情豊かな作品の魅力を堪能できる機会となります。