現代美術家・上嶋秀俊は一過性のインスタレーション(仮設芸術)を手法としながら、自ら探った色と形によって、現実と虚像を織り交ぜた独特の作品を発表しています。
室内の壁全体をキャンバスに見立てたり、屋外の自然環境のなかに半立体のパーツを組み立てたりして、一度きりの展示であっても、美術本来の色が醸し出す感情や形を味わう楽しさを提示しています。自然の持つ力や生命力を表現する意図がありますが、その見方を押し付けず、見る側の自由さを束縛することはありません。
当初は命の根源である水に関心を持ち、寒色に塗られた形の反復により、緩やかなリズムを感じさせる静謐な空間を生み出していました。やがて人間も自然の一部であり、自然環境と心の内を重ね合わせるようになり、日々たくさんの色や形をスケッチし蓄積していきました。この間、日常生活で感じた社会の閉塞感や自然災害への無力さが引き金となって、一転して激しい色彩を駆使し、拡散する力と求心力がせめぎ合う、エネルギッシュな表現に至っています。
これまでの旺盛な制作活動が評価され、上嶋秀俊は令和4年度「北海道文化奨励賞」を受賞しました。本展は、その受賞を祝し、北海道の現代美術を牽引していく、上嶋秀俊の作品の魅力をご紹介いたします。