稲沢市出身の磯野宏夫(1945-2013)は、20代後半に熱帯雨林に魅せられて以来、「生命(いのち)の森」を生涯のテーマとした画家です。個展等での作品発表のほか、教科書の表紙絵や企業のポスターなども手掛けて全国的に活躍しました。精緻な点描と鮮やかな色彩により想像力豊かに描かれた作品には、親しみやすさだけではなく長い年月をかけて作り出されてきた森の威厳も感じられます。60歳でマレーシアのボルネオ島を訪れ、森林破壊の惨状を目にしてからは一層自然の雄大さや美しさを表現することに力を注ぎ、それらが失われつつあることへの想いを作品に託しました。
本展では、磯野が1999年から2002年まで手掛けた王子製紙株式会社(現王子ホールディングス株式会社)のカレンダーの原画すべてを一堂に展示します。同社が保有する世界各地の森林を実際に訪れて制作した作品には、その土地固有の生命力溢れる森が描かれ、季節ごとの日差しの具合や温度までをも感じ取れるようです。この他、ゲームソフト「聖剣伝説」イメージビジュアル等の原画や、少年が森を旅する「冒険の森」シリーズ、森林破壊への危機感が込められた連作「熱帯黙示録」、晩年の作品等、合計49点を展示し、その世界観を広く紹介します。
画面を埋め尽くすように緻密に描かれた作品は、無数の生き物を擁し生命そのものと言える森への憧れや畏敬の念が込められています。磯野宏夫が創り出した生命(いのち)の森をぜひ会場にてご堪能ください。