自然から感受したイメージを独自に解釈し、詩情豊かな世界観を創出、花鳥風景画を確立した日本画家・佐藤太清(1913~2004年)は、2023年に生誕110年、2024年に没後20年を迎えます。太清の人生は、母の胎内にいるうちに父が病没、誕生直後には母も亡くす体験から始まりました。幼少期に孤独から逃れるように野山を歩き、そこで見たものを描くひとときが絵の道に進む端緒であったと、後に太清は語っています。
故郷・京都府福知山市に流れる由良川は豊かな恵みをもたらす一方、水害を発生させる暴れ川としても知られています。穏やかな自然が時に様相を変える瞬間を太清は何度も目撃したことでしょう。太清の描く絵画には、自然の美しさや生命感が込められる一方、恐怖や逃れられない死といった重層的なイメージがみられ、独自の画風が形成された礎には、幼少期からの自然との関わりが影響したと考えられています。本展は、太清が生涯にわたり描いた〝水〟に関連する作品に着目。画業70年における作品を概観しながら、水の心象表現をたどります。
また、初の試みとして、画室に遺された全絵具をサンプル化した1000色を超える色相図「太清の絵具棚より」を会場に設置。太清自身が調合した多彩なグレーに注目しつつ、画家の眼にせまる展観もみどころとなっています。