魚に魅せられた二人の画家
透き通るような水彩絵具をもちいて細やかな筆遣いで魚を描き、「魚譜画家」として注目をあつめる、長嶋祐成(1983年- )と昭和初期に「魚の画家」として名声を博した日本画家、大野麥風(1888年 - 1976年)。魚に魅せられた二人の画家の展覧会を開催します。
魚のしなやかな動きや鱗の輝きなど、生態をつぶさに観察して描かれた作品は、画家の生物そのものに対する好奇心に満ちた眼差しによって、親しみやすさと愛らしい魅力をたたえています。
大阪に生まれた長嶋祐成は、幼い頃の釣り体験をきっかけに魚に魅せられ、魚を描くことを通して水辺から得る素晴らしい自然を未来へと引き継ぐことを目指し活動しています。国内外からの依頼にこたえて様々な魚を描くほか、自らの文章を添えた絵本や図鑑など出版活動でも魚の魅力を発信しています。
明治期に東京に生まれた大野麥風は、洋画を学んだ後に日本画に転向し、関東大震災後、関西に移り住み、兵庫県西宮市で長く活動しました。特に魚を好んで描き、代表作『大日本魚類画集』は、大野が描いた原画を木版画職人による「原色木版二百度手摺り」ともうたわれた高度な技で摺り上げられた美しい版画集で、出版当時に好評を博しました。
本展では、姫路市立美術館が所蔵する『大日本魚類画集』の全72点の中から、大阪湾近海で見ることができる身近な魚たちを中心に40点を選び、長嶋が描いた日本の海に生息する彩り豊かな魚たち約60点を加えて一堂に紹介します。また、開催地である尼崎の海の歴史を伝える資料展示や、様々な関連プログラムもあります。魚の絵を通して日本の豊かな海の恵みを感じてください。