やまと絵は、平安時代に日本の風物を描いたことから始まりました。細やかに描き込まれた四季のうつろい、繊細な人物描写によりあらわされた感情、鮮やかな絵具やきらびやかな金銀の装飾といった特徴が挙げられます。本展で紹介するのは、やまと絵の伝統を受け継ぎながら制作を行った絵師たちです。中でも、幕末期の岡田為恭は、平安・鎌倉の古絵巻の原本を熱心に学んだことで知られています。2023年は為恭が生まれてから200年、2024年は没後160年に当たる節目の年であり、これを記念して大和文華館所蔵の為恭作品4件を一挙に展示します。
時代を経る中でやまと絵という概念は広がっていき、そこには多様な作品が含まれるようになりますが、常にその核心には、日本の自然や風俗を主題とした親しみやすさと、色彩や描線の優美さがあったといえるでしょう。本展では、やまと絵の根底に流れつづけた美の本質すなわち“やまと絵のこころ”に迫ります。
(担当 仁方越洪輝)