貝殻を用いて文様をあらわす螺鈿漆器は、朝鮮半島で盛んに制作されました。
高麗時代には貝を細かく切り出して菊や牡丹の唐草文様を施し、朝鮮時代には長寿や子孫繁栄などの吉祥文様や文人が好んだ詩文と絵画の組み合わせなど、多様な文様が螺鈿であらわされました。
大和文華館が所蔵する「螺鈿葡萄文衣裳箱」は、多くの実をつけて垂れる葡萄の図案が絵画を見るように巧みにあらわされた朝鮮螺鈿の優品です。昨年度修理が終わり、この度の展覧会で修理後の姿を見ていただくとともに、特別出陳作品として文様や器形が類似する同時代の螺鈿作品を拝借し、朝鮮王朝時代の螺鈿の特質に迫ります。また、館蔵品には数多くの関連する朝鮮半島を中心とした東アジアの絵画や陶磁器があるため、これらをともに展示しいたします。
貝の輝きによってあらわされた螺鈿の美しさと、豊かな文様表現の系譜をご覧ください。
(担当 瀧朝子)