杉浦非水(1876~1965)は明治から昭和にかけて活躍した日本のグラフィックデザインの第一人者です。
愛媛県松山市に生まれた非水は、東京美術学校日本画選科在学中に洋画家の黒田清輝と知り合い、黒田がフランスから持ち帰った書籍や資料を目にしたことから、図案家の道へ進みます。書籍や雑誌の装丁をはじめ、当時、流行の発信地であった三越呉服店の図案部で宣伝ポスターやPR誌のデザインを手がけ、そのブランドイメージ創出に貢献しました。さらに、図案集の出版やデザイン雑誌の刊行などを通して、日本におけるデザイン意識の普及や教育に大きな役割を果たしました。
日本人の美的感覚に、アール・ヌーヴォーやウィーン分離派といった西洋の造形要素を取り入れた非水のデザインは、レトロな魅力とともに時を経ても古びない新鮮さをあわせ持ち、現代の私たちの目をとらえます。
本展は、ポスターや図案、装丁を中心としたデザインの仕事、スケッチや『非水百花譜』などの作品、そしてデザインの源となった資料までも含めた約300点により、非水の生涯にわたる功績を紹介します。