「北九州版画考」と題された本展では、その名が示す通り、北九州地域における版画制作の過去と現在について考えようとするものです。時代の流れを追いながら、前期・後期の2回に分けて紹介します。
1950年代から70年代にかけて、国内外で種種の国際版画コンクールが催され、日本国内からも多くの受賞者を輩出しました。
その理由にはいくつか考えられますが、意識的な背景としては、日本美術の中で浮世絵版画が国際的に評価されたという伝統があることや、また、物理的な背景のひとつとしては、油彩画や日本画、彫刻作品に比べて輸送が比較的容易であり、国際店への出品に有利であることがあげられます。
しかし何よりも、テレビやインターネットの普及状況も現在とまったく異なる当時、版による表現が人々の思いや社会全体の空気に適したものとして人々の心を掴んだことが考えられるでしょう。
そうした諸々の条件は、私たちの町、北九州でも例外ではなく、当時、版画の分野においてひとつの高まりを見て取ることができます。
後期にあたる今回の展示では、当時の状況に至る過程で、北九州ゆかりの作家たちがどのように版に取り組んできたかを紹介します。作家の現在の活動もあわせて紹介することで、当時と現代の美術界における版表現の位置付けや可能性を探ります。園山晴巳、古賀 章、井上 裕、馬場 章、後藤英彦、等の作品を展示します。