艶やかな葉と可憐な花をもつ椿は、日本原産の花であり、冬の寒さを耐え抜く強い生命力をもつことから縁起のよい木とされています。また、「日本書紀」には神聖な呪木として登場し、「万葉集」にも詠まれるなど古くから日本人に親しまれてきました。江戸時代には琳派をはじめ多くの作家たちによって絵画や工芸などに椿のモチーフが用いられましたが、近代以降も日本画、洋画、工芸などの分野で多くの作家たちが椿を表現し、数多くの名品が生まれていきます。
本展では、椿絵のコレクションで知られるあいおいニッセイ同和損害保険のコレクションから、尾形光琳(こうりん)に代表される琳派の工芸作品をはじめ、横山大観、奥村土牛(とぎゅう)らの日本画、岸田劉生(りゅうせい)、香月泰男(かづきやすお)らによる洋画など、椿をモチーフにした作品を展示します。
五浦の地は、近代美術の発展に寄与した岡倉天心の隠棲地であるとともに椿の自生地でもあります。椿に縁の深い当館で、平成19年の展覧会以来16年の時を経てふたたび展示される椿の名品の数々を心ゆくまでお楽しみください。