三浦明範の画業50年を、油彩とテンペラによる彩色作品からシルバーポイントによるモノクローム作品まで、画家自身の言葉とともに辿ります。三浦はこれまで15世紀フランドル絵画の技法に遡り、新旧画材の試行錯誤を楽しみながら表現の可能性を広げてきました。画面の様式が変遷する一方で、身近な事物を克明に観察、描くことで問題を提起し、その答えを探しながら描き続ける姿勢は一貫しています。
展覧会名にあるラテン語"vanitas vanitatum(ヴァニタス ヴァニタトゥム)"は「空の空」を意味します。現実の不条理に直面しながら、虚無感に屈することなく、既存の秩序さえも問い直した末に辿りついた言葉として、旧約聖書中の「伝道の書」に残されました。真理に立ち向かうその言葉に重なる作品群を前に、生きること、死ぬこと、日頃あえて考えることが少ないような事柄と向き合う、絶好のチャンスとなるかもしれません。