2023年1月に逝去した郷土ゆかりの日本画家・高畑郁子を偲び、その画業を回顧する特集展示を開催します。
1929(昭和4)年に千葉県に生まれ、生後10か月で豊橋市に転居した高畑は、豊橋市立高等女学校(現・豊橋東高校)在学中、美術教師の石川新一に水彩画を学びました。1948(昭和23)年に女学校を卒業すると、石川の紹介で出会った日本画家の中村正義や後に夫となる星野眞吾らの刺激を受け日本画を描き始めます。1951(昭和26)年には早くも新制作展で初入選し、以後、同展や創画会を中心に発表を続けました。初期には、キュビスムなど西洋絵画の影響を受けた作品を描きましたが、1974(昭和49)年に訪れたインドやスリランカの文化に衝撃を受け、作風を転換。インドをはじめとするアジアの人々とその信仰世界を、鮮やかな朱色と曼荼羅のような緻密さで描き、独自の表現様式を確立します。さらに1980年代半ばからは、日本の遍路巡礼など民間信仰に溶け込む仏教へとテーマを移すなど、新たな境地を開拓し続けました。こうした制作活動の一方で、中村や星野らとともに画塾を開いたり、若手作家の発掘と育成のため私財を投じ「トリエンナーレ豊橋」が開催されるなど、郷土の美術振興に貢献しました。
本展は、当館コレクションにより初期から晩年までの7点を展示し、高畑が追求し続けた深奥なる祈りの世界を紹介するものです。時間や空間を超えた幻想世界を旅するようにご鑑賞ください。