公益財団法人常陽藝文センターでは郷土作家展シリーズ第284回として、「小さな想いを拾い集め 佐藤豊展」を開催いたします。
日本画家・佐藤豊さんは瓜連町(現・那珂市)に生まれ、中学の時の美術教師に憧れて東京藝術大学の日本画科に進学しました。当時の日本画の世界では、新たな表現の可能性を模索する大きな動きがあり、佐藤さんの師である工藤甲人(1915-2011)はヨーロッパの幻想絵画に影響を受けた作品を制作していました。佐藤さんも現実と幻影が入り混じったような不思議な雰囲気の作品を描き、工藤らが率いて「新しい日本画の創造」を標榜する創画会に出品するようになります。
大学院修了後は高校の美術教師を経て茨城女子短期大学で幼児美術教育に携わり、絵を描くことをただ楽しむ幼い子供の姿に励まされながら、創画会への出品を続けました。
佐藤さんは人が心の奥底にひっそりと抱える悲しみや苦しみと、その先にある微かな希望を表現しようとしています。生きていることの苦しさに打ちひしがれるのでも抗うのでもなく、ただ受け入れて歩んでいく人々が、緑や青を基調にした画面に漂います。金や銀、プラチナの箔を用いることによって、画面がほのかに輝き、救いが暗示されています。
今展では創画展出品作を中心に優品14点を二期に分けて展示します。
公益財団法人 常陽藝文センター
―形にすると崩れてしまいそうな「想い」を私なりに形にしてみたい―
その様に考えて筆をとりますが、出来上がったものは、いつも未完成です。
佐藤 豊