豊田市美術館では、「ねこのほそ道」、「徳冨満-テーブルの上の宇宙」の開催にあわせて、コレクション展「小さきもの-宇宙/猫」を開催いたします。
「世界の中心は今、美津保のベビーカーで眠るなずなの中にある」(堀江敏幸『なずな』)
小さきものは、生命の、事物の、原始にあたる存在だといえます。そして小さきものは、その小ささゆえに、私たちを限りなく近くに引き寄せる求心力を持つのではないでしょうか。小さきものを覗き込もうとする自分の姿を想像してみてください。視線も気持ちも、いっさいがその一点に注ぎ込まれ、そこには私と小さきものとだけの親密な空間が生まれます。
小さきものを護ろうとする態度は、祈りや希望にも通じるものです。それゆえに、原始としての小さきものには、様々な世界の可能性が秘められているともいえます。それは言い換えれば、小さきものが一転して、とてつもなく大きな存在であることを示しています。限りなくシンプルで小さいことが、大きなものに接続する力となります。小さきものは、私たちには感受することのできない世界の深淵にさえ触れているかもしれません。
小さき原子の粒は、宇宙を構成する可能性の粒。
それは、この人工世界に染まることなく、私たちを翻弄する小さき猫たちの存在にも通じます。
本展では、今年度寄贈・購入により新たに収蔵した作品も展示いたします。本展を通して、小さきものの大いなる力を想像していただければと思います。