本展は、館内空間、芸術の森公園、そして仮想空間を舞台に、山梨県出身の作家たかくらかずきの作品世界を展観する企画です。タイトルとして付された「メカリアル」は、シュルレアリスム(超現実主義)が日本に上陸した際の「機械主義」と呼ばれる傾向に着目した、たかくらによる造語です。本展の制作にあたり、たかくらの出発点となったのは、日本におけるシュルレアリスムの展開の黎明期より活躍した山梨県出身の画家、米倉壽仁(よねくらひさひと)(1905-1994)の作品鑑賞でした。
たかくらは、日本で広く共有される信仰の中に息づく「存在を信じるが触れることのできない、向こう側のものたち」を「デジタル上の存在」に極めて近いものと捉え、AIによる画像生成、ピクセルアニメーション、3Dプリント、VR(仮想現実)、NFTといったデジタル技術を用いて表現する作家です。米倉が晩年に取り組んだ、東洋思想、仏教、土着の信仰とシュルレアリスムを融合させ、現実世界を凌駕するようなイメージを生みだす探求に、たかくらは自身の制作活動との重なりを見出しました。
本展でたかくらは、機械と自然、メタバースと現実世界、AIと人間、合理と不合理といった、2つの異なる世界の和合を試みます。たかくらと米倉、2人の山梨県出身作家の共鳴から生まれる新しいイメージを、館内空間、芸術の森公園、そして仮想空間でご鑑賞ください。
※会期中、館内美術図書室で、VRゴーグルを用いた仮想空間体験をお楽しみいただけます。