古来より本尊の如意輪観音が人々の信仰を集める石山寺は、奈良時代に良弁上人によって創建され、その後平安時代に真言宗の寺となった長い歴史を誇る名刹です。王朝文化人たちが参じ霊験を得たという伝説が数多く残り、なかでも紫式部が『源氏物語』を起草した伝説がよく知られています。
石山寺には「石山寺縁起絵巻」(重要文化財)をはじめ、この伝説や源氏物語の場面にまつわる鎌倉時代から近代にかけての絵画や工芸作品がひろく収集されています。これらの多くは平安王朝の雅な文化を反映し、日本の伝統的な大和絵の技法をもとにした美しい色彩にあふれた作品となっています。また『源氏物語』は執筆されて約千年を経た今もなお、人々を魅了しつづける不滅の文学作品であることはいうまでもありません。
本展は石山寺と紫式部をテーマに、重要文化財の「石山寺縁起絵巻」(全七巻)や「源氏物語絵巻」(末摘花巻)をはじめ、最古の紫式部像といわれる作品や絵画、屏風、墨跡、工芸作品など、鎌倉時代から近代までの多彩な作品六十八点を紹介します。日本の大和絵の伝統とともに、紫式部という人物や『源氏物語』の魅力をも合わせて知ることができるまたとない機会になるでしょう。華やかな王朝文化の世界をぜひご覧下さい。