鮮やかなストライプが印象的な絵画シリーズを手がける今井俊介(1978- )は、具象と抽象、平面と立体、アートとデザインという境界を軽やかに行き来しながら、表現の探究を続けてきました。独自のポップな色彩感覚で、波や旗のようにも見えるイメージを表した絵画シリーズは、ある時ふと何気なく目にした知人の揺れるスカートの模様や、量販店に積み上げられたファストファッションの色彩に強く心を打たれた体験が原点となっています。ストライプや水玉といった単純な色と形の組み合わせによる模様をランダムに配置し、さらにそれらが歪んだり波打ったりすることで生まれる形態をキャンバスに描きだす今井の制作は、絵画の基本要素である色や形、平面性への考察に基づいており、今井は絵画の根本的な意味やその可能性を問い続けています。
本展は、2022年に丸亀市猪熊弦一郎現代美術館で開催された、美術館における初めての個展を、東京に巡回するものです。ストライプの絵画に至る過程ともいえる作品群を新たに加え、初期作品から新作まで、絵画を中心に、立体や映像、インスタレーションなど、さまざまな表現をあわせてご紹介します。視覚情報が溢れる現代社会を生きる私たちが、今井が生み出す色と形の新鮮なリズムを通して、身体的な感覚をひらく機会となれば幸いです。