木喰仏や円空仏をはじめ、近世の神仏像には庶民信仰を対象とした素朴な造形を数多く目にすることができます。当館の創設者・柳宗悦(1889-1961)は、大正時代末期に木喰仏を発見したことでも知られるように、素朴な彫像が湛える美に早くから目を向けていました。その萌芽は、文芸美術雑誌『白樺』と関わっていた20代から、ロダンを始めとする西洋近代の「彫刻」作品に親しんでいたことに遡ることができます。本展は、当館コレクションを「彫刻」という観点から目を向ける試みです。
民藝運動を通じて取り上げられた品々においても、囲炉裏や竃(かまど)の上の梁などから下げる自在鉤や、神社などに奉納される獅子頭や仮面、また鯉形水滴といった朝鮮時代の文房具など、彫刻的な要素を持つ工芸品は多く見られます。雑誌『工藝』第88号(1938年)では、「民間の仏体」が特集され、仏師の手によらない仏像、現在で言う民間仏が積極的に紹介されることになりました。
本展では、これらに加え、朝鮮の石仏、中国の明器など東アジアの彫像、さらには海外諸国の祖霊像や仮面、キリスト教の民間の聖像などを交えて展示します。併せて、柳の長男で工業デザイナーの柳宗理が館長を務めた時代に集めた沖縄の屋根獅子や、アフリカの彫像と仮面など、館蔵の彫刻的な造形を一堂に展示します。