当館が所蔵する日本の漆工芸には、創設者・柳宗悦(1889-1961)が好んだ「漆絵」が施されたものが多く見られます。中でも現在の岩手県を中心とする南部地方で生れた「秀衡椀」や「浄法寺椀」と称される椀類は白眉と言えましょう。またアイヌ民族の使用品や琉球漆器、寺社の什器、民間の慶事に重用されたものなど、漆器の種類は多岐に渡ります。一方、陶磁器の蒐集でよく知られる柳の朝鮮工芸への眼差しは、漆工芸の美も確かに捉えています。アジア各地で作られ、朝鮮半島では高麗時代から発達した「螺鈿」。花や鳥などが貝片によって象られており、光を受けて輝く様には気品があります。朝鮮の漆工芸では、宮中で用いられた品から民衆の日用品まで、幅広い層の生活を彩った品々が認められます。
本展では、日本・朝鮮両国の優品に加えて、黒田辰秋(1904-1982)や丸山太郎(1909-1985)ら漆工芸作家の作品も紹介します。日本民藝館の漆工芸コレクションの特色である、無垢で健やかな美を持つ、鮮やかな漆の世界をお楽しみ下さい。