「まずこの迫力ある布の造形を見られたい。美しく神秘的でさえあるこの着物を。」
収集家としても知られる芹沢銈介。当館には約4500点の芹沢コレクションが収蔵されています。その中で一つの重要なグループを形成しているのがアイヌ関連資料で、その数は85点にのぼり、中でも衣装は37点を占めています。
芹沢がいつ頃からアイヌ工芸に関心を寄せるようになったかは定かではありませんが、昭和7(1932)年頃、アイヌ工芸の収集家・研究家として知られた杉山寿栄男と面識を得たのがきっかけと思われます。収集した品々は昭和20(1945)年の戦災で一度失ってしまったものの、その後も早い時期からアイヌの工芸品を集め身辺においていたことがわかっており、アイヌへの思いの強さが感じられます。
芹沢は「北方の着物」(1971年)というエッセイの冒頭で、「まずこの迫力ある布の造形を見られたい。美しく神秘的でさえあるこの着物を。」と書き出しています。民俗学的な興味ではなく、信仰に裏打ちされた神秘的なまでの美しさに魅了された芹沢が、自らの眼で選び集めた品々をどうぞお楽しみください。
展示室の前半には、「いろは文二曲屏風」「華の字のれん」など、芹沢の代表作50点を展示します。