シリーズ第18回となる今回は、民衆に広く親しまれた工芸分野のひとつである「伝統こけし」について、現在の鶴岡市にあたる地域で活動していたこけし工人の作品を紹介し、今日に至るまでの様相を辿ります。
つぶらな目や胴の上部に描かれるアーチ状の装飾が印象的な阿部常吉や阿部進矢のこけしは、土湯に生まれ、蔵王高湯や山形を経由して温海温泉に移住し、鶴岡で最初にこけしを広めた阿部常松の型を継承したものです。秋山慶一郎や秋山一雄のこけしは、どっしりとした太い胴や華やかな描彩が特徴で、慶一郎のルーツである鳴子と蔵王高湯両方の影響がうかがえます。
そのほか、修行先の鳴子で学んだ様式で繊細な筆致のこけしを作った本間留五郎や、60歳を前にして青森の工人に弟子入りし、素朴な表情と簡素な胴模様のこけしを制作している五十嵐嘉行などを加え、それぞれに来歴もこけしの容貌もバラエティに富んだ、物故工人や現役工人のこけしや木地玩具を一堂に会して紹介します。