いわき市を中心にして南北に拡がる採炭地・常磐炭田は、本州最大の炭田地帯として、明治時代から昭和の中頃まで隆盛を誇り、国の近代化や戦後の復興を支える基幹産業として重要な役割を果たしました。また、当地域最大の地場産業としての炭鉱は、合理化・閉山による人口の流出などの様々な問題を思い出すまでもなく、地域の経済や社会などに少なからぬ影響を与える大きな存在でした。
炭鉱は、そこで働く人をはじめ、地元の画家、写真家らによって身近な現実として描かれ撮影されたばかりでなく、1956年には中谷泰、佐藤忠良ら中央で活躍する美術家のグループによって描写の対象として取り上げられ、雑誌『アトリエ臨時増刊号』で「新しいリアリズム」の特集が組まれたこともありました。
今回の展覧会では、常磐の炭鉱に関係のある絵画、彫刻、写真などを約300点展示し、それぞれの立場から炭鉱の現実に真摯に向き合った画家や写真家らが、炭鉱をどのように捉え、何を表現しようとしたかを探っていきます。彼らによって多様に表現された作品の各一面と向き合っていくことは、常磐の炭鉱について考えを深めるきっかけにもなることでしょう。