山鹿出身・在住の洋画家小材啓治は、鍋田横穴古墳や阿蘇などを主題とし、赤みが混じる独特の色彩と、ざらりとした土や岩の感触を想像させる独特のマチエール(絵肌)で描き続けています。
好きな画家として坂本繁二郎と鳥海青児を挙げるなど、リアルさを極めることには全く興味がなく、キャンバスのしなりを感じながら、いつ筆を止めるかは先に決めずに、画面に色を載せ続ける行為そのものが、なにより楽しいと小材は語ります。
世間には、流行の描き方、流行の画題は確かに存在します。しかし、小材は反骨精神のもと自ら選んだやり方に長く向き合ってきました。
阿蘇の火口壁の土の色。古墳や石像にかすかに残るベンガラの赤。風と土が生み出す色彩やかたちから得た感動を、遠い昔この土地で生きた人々の営みへの想いを、どのような構図で、どのような色でキャンバスに表現するかが、小材の選んだ挑戦です。
本展では、日展特選受賞作や、示現会受賞作などを中心に、2002年からの20年の画業を紹介します。
(熊本市現代美術館学芸員 冨澤治子)