決して飼いならされることなく、野生を保ったまま人間とともに暮らすねこ。なにかの役に立っているわけではないのに飼い主の情緒に豊かに訴える、そんな普通で変な生きもの。群れをつくらずひとりで狩りをする肉食獣の彼らは、独立心が旺盛で優雅な、家のなかの小さな虎である。
これまで人間は多くの種に影響を及ぼし、世界中の動物を絶滅へと追いやってきたが、ねこは長い時間をかけて人間と暮らすようになった。そして人間が自然を離れて都市を形成し、高層ビルに住むようになると、ねこも一緒に空に上がってきた。ねこはいつも、人工的な環境のなかでも決して手なづけられることのない、小さな自然である。本展では、隙間や内と外を自在に行き来する逸脱可能性として、また言葉の秩序から逃れる不可思議な存在として、自由、野生、ユーモア、ナンセンス溢れる、ねこのような現代美術を紹介する。