水辺にたたずむナルキッソス(ナルシス)がふと水面に自らの影をみとめ、その姿かたちに我を忘れる。この水鏡をめぐる神話は、近代絵画史そのものではないでしょうか。
変化する光景を求め、くりかえし海岸を訪れた画家たち(印象主義)が、いつしか自分だけの見方、視ることの主観性を知り(ポスト印象主義)、ついには画面になまなましく自己を投ずる(抽象表現主義)。このナルキッソス/画家の変容は、現代にまでその長い影を落としています。
本展では、自画像、水辺の風景から、水を制作のモチーフとする抽象的表現まで、絵画を中心に約80作品を展観。19世紀中頃から現代にいたるイメージの流れを横断し、水と自意識の接点をさぐります。