山形県に生まれた戸田吉三郎(1928-2016)は、終戦後、東京美術学校(現・藝大)に入学し、将来を嘱望されフランス留学を果たします。帰国後、華やかな活躍を期待されますが、美術界の潮流れや評価に背を向けるように、ただひたすらに創作に没頭。山小屋に籠り、哲学書を読み、裸婦を描き続けました。生前、美術評論家・米倉守氏は戸田吉三郎の裸婦について「媚態がない」と評しました。山々のように雄大な空気を帯びた裸体から漂う、静けさと温かみ。粗い線で描かれた女たちから立ち上がる生と死の気配。世間のものさしで物事をとらえる危うさと格闘し、裸婦を通して真理を追究しようと試みた一人の画家が問いかけるものとは?森岡書店と戸田デザイン研究所が、時代を超えたメッセージを届けます。