1981年ギャラリーギャラリーが始まった年、私ははじめての展覧会“scene”を開いた。その光に満ちた真っ白い空間は、煩雑な繁華街の中にある古いビルの5階に、ぽっかりと静かに浮かんでいるようだった。
ここで展覧会をすることのよろこびは、現実にありながら現実とは切り離された、心遊ぶ時空を手に入れることができることである。
そして、新しい作品空間をつくるための実験の場であった。
紙の繊維を水に溶かして混ぜると、混沌とした状態になる。
その底から紙を掬い上げて乾燥し、空間に宙吊りにすると、
ぼやけた紙の輪郭は空気と曖昧模糊に溶け合う。
私の作品は、紙と空気が交錯するような“scene”を空間に出現させることで、存在の不確かさを表している。