大阪、東京、パリ―。
3つの街で、画家としての短い生涯を燃焼し尽くした画家、佐伯祐三。その人生は多くのドラマと伝説に彩られています。彼が生み出した作品群は、今なお強い輝きを放ち、見る人の心を揺さぶらずにはおきません。
1898年に大阪で生まれた佐伯祐三は、25歳で東京美術学校を卒業し、その年のうちにパリに向かいます。作品を見せたフォーヴィスムの画家ヴラマンクから、「このアカデミック!」と怒声を浴びたことが佐伯を覚醒させます。2年間のパリ滞在中に、ユトリロやゴッホからも大きな影響を受け、佐伯の作品は変貌を遂げていきます。1年半の一時帰国を経て、再渡欧したのは1927年のこと。パリに戻った佐伯は、何かに憑かれたかのように猛烈な勢いで制作を続けますが、結核が悪化して精神的にも追い詰められ、1年後にパリ郊外の病院で亡くなります。30年の短い人生でした。
佐伯にとってパリは特別な街でした。重厚な石造りの街並み、ポスターが貼られた建物の壁、プラタナスの並木道、カフェ、さらには公衆便所までが、傑作を生み出す契機となりました。一方で、生誕の地・大阪、学生時代と一時帰国時代を過ごした東京も、佐伯芸術を育んだ重要な街です。この展覧会は、3つの街での佐伯の足跡を追い、独創的な芸術が生成する過程を検証します。東京では18年ぶりの本格的な回顧展となる本展は、佐伯芸術の魅力を再認識し、新たな発見へと導く機会となることでしょう。