長野県立美術館本館2階の「アートラボ」は、視覚以外の感覚も使った鑑賞が可能な「ラボラトリー(実験室)」となることを目指しています。2022年度の第Ⅲ期展覧会では、荒木優光を紹介します。
荒木は音を聴くこと、またその環境そのものに着目し、さまざまな仕方で音を聴く場―独自に「音場(おんば)空間」と呼ぶ―を構築することを基盤とするアーティストです。「音の場を作ることは、音を聴くことから始まる」と言う荒木は、視聴環境自体をつくることをも作曲行為であるととらえています。つまり、荒木の作品には「音をいかに聴くか/聴くことができるか」という問題が通底しています。
今回アートラボで展示するのは、見ること(視覚)と聴くこと(聴覚)を行き来しながら鑑賞する作品です。レイモンド・カーヴァ―の短編小説『ダンスしないか?』をヒントに、「リ-サイクル」というキーワードに着想を得た無人の音楽劇を展開します。展示室には使い古された家具やレコードが配置され、人々の声や様々な音が響きます。音が録音・再生されることによって時間や場所を越えた再現性をもつ性質に、中古の品々や人々の関係性を重ね、それらが循環する様子を描くのです。
その音を聴いたとき、どんな景色が見えるでしょうか。それぞれのうちに立ち上がるストーリーをお楽しみください。
※会期中にイベントの開催を予定しています。詳細は決まり次第お知らせしますので、当館HPやSNSにてご確認ください。