冨澤 謙は、港や運河など小樽らしさ溢れる風景を描き、道展・一水会展で長く活躍してきた風景画家です。北海道学芸大学卒業後、小樽で美術教師となった冨澤は、野外での写生を大切にし、生徒を引率した小樽公園で、東京から帰省していた中村善策と偶然出会い交流を深めます。風景画家としての冨澤の歩みは、善策の信条である“現場主義”を受け継いだ写実の精神に支えられています。冨澤は具象絵画の本流から離れることはなく、多くの作品は、生まれ育った小樽の運河、積丹海岸など故郷の風景を鮮やかに魅力的に描いています。
代表作が生まれた運河は、旧運河の北浜橋からの眺めに絞った作品が多く、中景には北海製罐や水面に浮かぶ艀を取り入れ、重厚な佇まいを表現しています。また、1990年代からは、たびたびヨーロッパに赴き、特にイタリア各地の風景に力を注ぎました。
本展は、中村善策の系譜に連なる風景画家、冨澤 謙の、壮大なスケール感と寒色を主とした爽やかな色彩を特徴とした風景画を、これまでの代表作を選りすぐり展覧するものです。