近藤高弘は1958年京都生まれ。人間国宝(染付)の祖父・近藤悠三と父・近藤濶のもとで育ち、卓球で日本代表選手になった異色の経歴を持ちます。25歳から陶芸の道を志し、1994年には京都市芸術新人賞を受賞、2002年には文化庁派遣芸術家在外研修員として、エジンバラ・カレッジ・オブ・アート・マスターコース(イギリス)を修了しました。
初めは伝統的な染付作品を制作した近藤でしたが、その後、金属や鋳造ガラスなど新しいメディウムを取り入れ、独自の造形表現を確立しました。1993年に、陶にプラチナ、金、銀、ガラスの混合物を粒状に結晶化させるオリジナル技法「銀滴彩」(特許取得)を生み出します。磁器に繊細な煌めきをもたらし、表面の雫にさまざまな表情を与える同技法は、土を媒介として、火の中から水を生むことをコンセプトとしています。
本展では銀滴彩に焦点を絞り、水をテーマに制作した「Reduction」、「Wave」など、旧作、新作合わせて十数点を展示致します。特に、東日本大震災の衝撃から制作された坐像「Reduction」は、ボストン美術館やギメ美術館など5つの美術館に収蔵された作品です。また、中国・洛陽博物館の協力のもと、唐三彩の鎮墓獣を型取りし、それを銀滴彩で再現した作品を、新たな試みとして展示いたします。
近藤の主な個展に「-手の思想-」(何必館・京都現代美術館、2017年)、「生水ーうつろいゆくウツワー」(瀬戸内市立美術館、2016年)、「セルフ ポートレート」(伊丹市立工芸センター、2010年)、「変容の刻 ーMetamorphoseー」(京都芸術センター、成羽美術館、パラミタミュージアム、2007年)、「Takahiro Kondo: New Blue & White」(スコットランド国立美術館、1995年)などがあります。東京画廊+BTAPでは、2011年の『モノケイロケモノ』展に出品し、2018年には作曲家・一柳慧との二人展『消滅』を開催しています。本展は近藤にとって弊ギャラリーでの初個展です。
皆様のご来場を心よりお待ち申し上げます。