アドリアン・リース 来日特別企画
『3匹の野うさぎ』 (Adriaan Rees “Drei Hasen” in Japan)
[2つの展覧会と4つのパフォーマンス]
アドリアン・リース氏の来日特別企画『3匹の野うさぎ』は、9月3日(土)スタートのGallery KTO(東京・神宮前)での1つめの個展『ユーラシアの彼方から』[Across Eurasia]を9月27日(火)に終えました。2019年11月~2020年3月のオランダ・スヘフェニンゲンの彫刻美術館[Museum Beelden Aan Zee]での大規模な個展において展示された『Silver Torso』他、オランダの風車による動力で製作される「Windmill Paper」の上に描かれた陶土によるドローイング作品群、赤土をもちいた新作『New Samurai』など、アーティストとして更なる成熟期へと歩むアドリアン・リースさんの作品群の数々をご堪能いただけたことと思います。
※2019年11月~2020年3月の[Museum Beelden Aan Zee]での展示作品・インタビュー動画 http://www.adriaanrees.com/witboek--the-white-album.html
そして予定されていた4つのパフォーマンスは、天気にも恵まれ、やや陽射しの強い中ではありましたが、無事に上演と撮影を終えました。本記録映像、リース氏監修のもとで映像作品として編集作業に入っております。映像の一部は、ホームページ、各SNS、Kaneko Art GalleryのYouTubeなどで公開されます。
日本側演者・スタッフとの協働によるパフォーマンスの実現を通じ、私たちはアドリアン・リースというアーティストの五感を刺激する豊かな作品性の芯には、立体彫刻作品にみられる悠々とした身体性(手の動きをそのまま残したかのような作品性)、演者たちとの濃厚なコミュニケーションを即座に積み重ねていく包容性、尚且つそれらを瞬時により豊かなものとしてフィードバックできる天性のアーティスト性、ユーモアのある表現の中に社会に対する鋭い批評性を秘めた深い洞察、それらが彼の芯のまわりに何層も積み重なり、今回の来日プロジェクトが実現したのだとあらためて感じました。
それはGallery KTOでの展示作品群(陶・磁・ガラスによる立体・彫刻作品、そして陶土によるドローイング作品)とも共鳴をしながら、アドリアン・リースというアーティストの歩みと現在地を強く印象付けることとなりました。
Kaneko Art Gallery での2つめの個展『土による絵画、そして窯の作品』(Earth Drawings and Fire Works)は早くも会期の折り返しに入ります。
壁に直接描かれた陶土によるドローイング作品は、会期末の10月10日(日)までご覧いただくことが出来ます。
これはラストパフォーマンス『四つの手』(Quatre mains)において、生まれ変わった白い野うさぎと、ここまで3匹の野うさぎと2人のミュージシャンのパーティー(行列・集団)を率いてきた『獣』が役割を入れ替わるかのように互いの無言のコミュニケーションを身体表現のなかで繰り返し、白い野うさぎが生き生きとした壁への表現をできるようになるまでの物語です。そして『獣』は全ての力を出し切ったかのように床に横たわり、野うさぎはそれを慈しむようにいつまでも寄り添っていました。
描かれた日から、日に日に表情を変えていくこのドローイング作品は、ときにフラグメント(欠片)として面に落ち、あらたな描画の跡を壁に現出させます。
陶土によるGhostシリーズの新作群、そして柔らかな雰囲気のドローイング作品群。静寂さをたたえた展示空間にあらわれた、迫力溢れながらも豊かな哲学性を秘めた、いまこのときだけの大きな作品、展示壁にそのまま描かれたメモリアルなドローイング作品を、ぜひご覧いただきたいと思います。