日立製作所が社内外の文化向上を目的に1937年(昭和12)に開いた大甕陶苑は戦後、より本格的な陶房として操業するために、京都市立美術大学(現・京都市立藝術大学)に人材の紹介を依頼しました。そうして日立へやってきた若き陶芸家が竹内彰と加守田章二の二人でした。
福井県勝山市で生まれた竹内彰(1931─2002)は大学で富本憲吉と近藤悠三に師事し、専攻科を修了した1956年(昭和31)に大甕陶苑に赴任しました。それ以降の竹内は2001年(平成13)に陶苑がその歴史の幕を閉じるまで同所の中心として作陶に携わり、竹内彰自身としての制作・発表も精力的に行いました。
1964年(昭和39)には、民芸的な文様を大胆に施した《灰釉鉄絵皿》によって日本伝統工芸展会長賞を受賞し、1970年にも再び同賞を受賞するなど、1970年代に至るまで大皿のシリーズが高い評価を受けています。1970年代半ば以降は南アメリカの古代文化や当地の遺跡の質感などに影響を受けるようになり、以降1990年代をとおして、竹内生来の特徴である伝統様式に根ざした抽象文様とシンプルで力強い造形とを、より自由な方向へ展開していきました。
この展覧会は、伝統的な工芸美を起点に、時に骨太に、時に洗練された造形を日立において展開してきた竹内彰の生涯にわたる作品を一同に紹介します。あわせて竹内の監修による、大甕陶苑作品についても展示します。