笠岡市立竹喬美術館は、岡山県笠岡市出身の日本画家、小野竹喬(1889-1979)の偉大な業績を称え、その功績を後世に永く伝承させる目的で、昭和57(1982)年10月に開館しました。開館当初は、18点の竹喬作品でスタートしましたが、開館40周年を迎える令和4(2022)年3月末には、竹喬作品1,708点(素描等含む)を所蔵するまでになりました。
小野竹喬は、14歳から89歳で亡くなるまで、日本の四季折々の美しい自然風景を描き続けました。素直な眼差しで自然へ心通わせた竹喬の風景画には、一見、絵にはならないような、さりげない自然の表情や息遣いさえも感じられます。特に、季節の変わり目、あるいは一日のうちの一瞬の自然の“移ろい”を見出すことを得意とし、それを穏やかな表現で作品に表しました。竹喬自身、日本の風土と題したエッセイの中で、「風景の中にある香りのようなもの、それを捉えるにはさりげない目立たないものでも、一向差支はないようである。…自然はいつでも、ほぼ同じ姿、同じ移ろいで、私達の前であるものであろうが、作者の側で云えば、千差万別のものとなる。」(〈特集・日本の自然〉日本の風土『三彩』268 昭和46年1月)と語っています。
この展覧会では、開館以来収集した竹喬作品(寄託品を含む)を通して、竹喬が歩んだ画業を改めて見つめ直し、自然とともに歩み続けた竹喬芸術の魅力をご紹介します。竹喬の繊細な感性によって織りなされた四季折々の“移ろふ自然”をお楽しみいただければ幸いです。