大正・昭和期の政財界、美術界で活躍した人々と交流した素封家の日本画コレクションを紹介します。収集者の片岡善雄(1885~1970)は、千葉県茂原市早野の地主の家に生まれ、東京の中学に進学し、一時期、政治家・後藤新平のもとで働き、帰郷後には農地改革に尽力した地元の名士でした。同時に片岡は、芸術文化を深く理解し、岩田正巳、河内舟人、森白甫ら、東京画壇の画家たちを支援しました。作品とともに残された書簡からは、片岡が度々上京して画家を訪ね、展覧会で作品を鑑賞し、戦中・戦後の厳しい状況下では精神と物資の両面で彼らを支えていたことがうかがわれます。また、洋館を備える広大な邸宅に画家を招くこともありました。
そうした交流から育まれたコレクションは、床の間に飾るにふさわしい掛軸を中心に、諸家による画帖や色紙集などからなります。一地方の素封家に慈しまれ、大切に伝えられた作品の数々をお楽しみください。