往復書簡vol.5に寄せて
この在学生と卒業生による交歓展「往復書簡」は今回で第5回目になった。この企画は学内での教育の現場を少しだけ離れてすでに社会に出ている先輩アーティストと在校生が何往復もの書簡(メール)を交わすことにより、学内の同質性の強い制作についての価値観が少しでも揺り動かされないかという試み。今回の参加は大学院修了後2年目になる齋藤礼奈さんと学部4年の中西悠月さん。齋藤さんは修了制作も修了後に開催した初個展もともに非常に秀逸で学外からの評価も高く、画家としての実績の第一歩を丁寧にスタートさせたところ。
一方中西さんはいまだ学外での展示を未経験でありながら大胆な作画でこれからの卒制が非常に楽しみな学生。2人の共通点はその作品が抽象絵画であるということで、今回の2人展はその作品の「抽象」作品にまつわる概念性の違いもひとつの見どころになるのではと期待している。2人で決めた副題は「いろの天気雨」となっており、それをキーワードに抽象作品がそれぞれの価値観の元に立ち上がって来てどのような展示構成になるのか非常に楽しみではある。天気雨のような予報の範囲に収まらないであって欲しい。または大洪水を起こすような荒れ方をしても良いのではないかと思っている。
東京造形大学教授 近藤昌美