幕末から明治へと転換する激動の時代に活躍した浮世絵師・月岡芳年(1839-1892)。西洋画の写実性を取り込みながら、柔軟な発想とたくましい絵心で、浮世絵の歴史の最後に強烈な閃光を放ちました。
芳年は、12歳のとき歌川国芳に入門し、15歳の若さで画壇デビューを果たします。その後、22歳頃から本格的に浮世絵師としての活動をはじめ、54歳で没するまでに、変容する社会に呼応すべく西洋画の研究や新たな表現を試みながら、師譲りの武者絵や歴史画、錦絵新聞の挿絵、美人画など、多くのすぐれた作品を世に出しました。
芳年といえば、これまで「血みどろ絵」や「無残絵」のイメージを強くもたれてきましたが、そうした作風は画業早期のわずか数年の傾向であり、近年では、画業全体を見渡すことによって再評価の機運が高まっています。
本展では、芳年の代表作であり晩年の集大成である「月百姿(つきひゃくし)」シリーズをはじめ、美人画の傑作シリーズ「風俗三十二相」、近代性があらわな「新撰東錦絵」シリーズなど、全150点でその多彩な画業を展望します。
この機会に、「最後の浮世絵師」芳年による革新的な作品の数々をお楽しみください。