―やさしい、まなざし―
にじんだ色彩で描かれた子どもたちや花々のすがた。いわさきちひろが描く明るく、甘く、やわらかな絵画世界は、国や世代、性別などあらゆるものを越えてひろく愛され続けています。
ちひろが絵本画家として歩み始める以前のこと。いわば模索期にあたる1940年代前半に、ある画家との出会いがありました。その名は、中谷泰(なかたにたい)。ちひろは中谷の作品に感化され、中谷のもとで油彩画の指導を受けました。戦争により彼らの芸術活動は中断を余儀なくされますが、戦後、いわさきちひろは童画家として、中谷泰は洋画家として、活躍の幅を広げていきました。
厳密にいえば、ふたりの師弟関係はわずか1~2年ほどの期間でしたが、その交流は生涯を通じて続きました。愛すべきものに向けるまなざしのやさしさは、表現するジャンルは異なるものの、彼らふたりのどの作品にもあふれています。本展では、これまであまり知られてこなかったふたりの交流を、いわさきちひろの絵本の原画や油彩画、素描等約110点、中谷泰の油彩画・素描等約40点、関連資料約20点によりご紹介します。