髙島野十郎(1890-1975)は、福岡県久留米市出身の洋画家。「蝋燭」や「月」という特異な主題を独特の写実的筆致で描いた画家として、近年では全国的にもよく知られる存在となりました。東京帝国大学農学部水産学科を首席で卒業しながらも画家の道を選び、流行や時代の趨勢におもねることなく、自らの理想と信念にひたすら忠実であろうとしたストイックな生き方は、出口の見えない混迷の時代を生きる私たちにも非常に魅力的に映ります。
本展は、コロナ禍のなかで2021年3月に当館が新たに立ち上げたオンラインサイトである「福岡県立バーチャル美術館」内にある架空の展示室「髙島野十郎の世界」を、実際の展示室で実現しようとする試みです。《蝋燭》、《月》、《からすうり》ほか野十郎の代表作約40点を味わいつつ、バーチャルという新たな美術体験とリアルとの違いを体感してみてください。